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剥がしたとき、ラベルに文字が浮き出ているのに、被着体には何も残らない。この魔法のような「改ざん防止用ラベル素材(非転着タイプ)」が、セキュリティー対策に役立つとしてさまざまな業界から注目を集めています。
印刷材営業部
高桑 哲哉
技術・開発室
大畠 健二
素材設計研究室
網野 由美子
※掲載内容は取材時点のものになります
高桑
これまでリンテックが改ざん防止用ラベル素材として提供していたのが、剥がすと「開封済」や「VOID」などの文字が転写されるタイプでした。開封した痕跡を残せることから、食品や化粧品など、安全性が強く求められる商品で利用されています。
網野
従来品は開封済みであることが一目で分かるのが特徴。ただ転写される文字の部分はのり(粘着剤)のため、触るとベタベタしますし、セキュリティー上、簡単には拭き取ることができません。箱など対象物をきれいなまま保管したり、再利用したい方にとっては不自由な面もあったと思います。
大畠
こうした要請もあり、残留物のない改ざん防止用ラベル素材があればいいよね、ということで開発されたのが、この「非転着タイプ」。剥がすとラベルに文字が浮き出ますが、貼られた対象物にはのりが残らないという非常にユニークな性能を持った製品です。
高桑
開発が一気に進んだのは、国際的な大規模イベントにおいてセキュリティーラベルとして利用したいという要望があったのがきっかけでした。セキュリティー業界においても、実は“ラベル”は重要な役割を果たしているんです。
網野
確かに部屋や車両の扉に改ざん防止用ラベルを貼っておけば、誰かが侵入した形跡が残るから安全ですね。理にかなったセキュリティー対策だと思います。
大畠
「非転着タイプ」であればのりが残りませんから、イベントが終了したらさっと剥がしてきれいに元通り。後片付けが楽になるため、イベント会場の設営を担当している方たちにとっては待望の商品だったでしょう。
大畠
開発は、まずは採用実績としてすでにある表面基材と粘着剤、そして設備をいろいろと組み合わせてみるところからスタート。まったく別の用途で導入した設備がうまくマッチすることが分かったので、割と早い段階で「これはいけそうだ」と開発チームが色めき立ったのを覚えています。
高桑
新しい設備が使えると分かったことで、モノづくりと特許の回避が同時にできるようになったのは非常に大きい。立ち上げてすぐに及第点くらいのラベル素材ができていたので、営業としてはホッとしました。ただ、そこからが大変だったんですよね、網野さん。
網野
及第点から、きちんと製品として仕上がるまでには、相当な道のりでした。被着体によってはのりが残ったり、環境によって粘着力が下がったり・・・。このラベルには、とてもおもしろい「からくり」を持たせているので、ほかの製品と比べると作業工程がとても多いんです。どこをどう変えれば納得のいくラベル素材ができるのか、莫大なサンプル品に埋もれながら、試行錯誤を繰り返していました。
高桑
イベントのセキュリティー対策で使用するという大きなテーマはあるものの、どんな材質に貼るかは明確ではなかったですし、貼り続ける期間も分かりません。あらゆる使用シーンを想定する必要があったので、当然、試験項目がどんどん増えていきました。
網野
試験は本当に大変でした。屋外のイベントとなると真夏の炎天下で貼られるケースも想定する必要がありますし、反対に気温がマイナスという状況も考えられます。また長期間貼りっぱなしにしたときの粘着性能も試さなくてはなりません。
大畠
被着体の試験も山のようにやりましたね。そもそものりが残るかどうかは、被着体の材質とのバランスで決まるもの。かりにガラスで残らなかったとしても、金属に貼ってみると残ってしまうことはよくあります。しかし「非転着タイプ」は“のり残りなし”と言う以上、どんな材質でものりを残すわけにはいきませんから、ありとあらゆる材質に貼って試しました。
高桑
最もよく覚えているのが車両のテスト。大畠さんと社用車にこっそり貼って試したんですよ(笑)。貼ったまま洗車機に入れてもラベル素材が剥がれないか耐久性を試したり、同時に他社製品も貼って比較したり。あそこまでいろいろな試験をしたのはこのラベル素材が始めてだと思います。
大畠
結果的に、少しのりが残ってしまうような比較製品が多い中、当社の「非転着タイプ」は残らなかったんです。洗車の試験をクリアしたおかげで品質の高さに自信が持てました。
網野
マンホールに貼る試験もしましたよね。貼ったラベル素材を車で踏みつけて耐久性を調べたりして。クリアしてもクリアしても次々と壁が現れるような感覚で、不思議とだんだん楽しくなっていったのを覚えています。
高桑
残念ながら、その国際イベントでの採用は見送られましたが、別の国際イベントでは、とある鉄道会社でイベント期間中の設備・施設の安全性を保つための密封用ラベルとして採用され、イベント終了後の原状復帰時は「のりが残らなかった」という声をいただいています。また上から印刷コートをかけたことで社名が入れられるようになり“簡単にマネできない”というセキュリティー性をプラスした点も好評でした。
大畠
コロナ禍になってより「非転着タイプ」が求められる場面が増えたように感じています。たとえば宿泊施設。ラベルを剥がすと「清掃済み」や「除菌済み」と文字が浮き出る仕様で、お客様にさらなる安心をお届けできることから、導入を検討している会社もあるようです。
網野
またコロナ禍で利用者が増えた飲食の宅配サービスも、“誰も開けていない”ことが一目で分かるラベルは需要が高いようです。今後は食材をはじめとした、さまざまなデリバリー業界にも浸透していくのではないでしょうか。
大畠
今はフィルムが柔らかく、凹凸がある場所にも貼れるタイプを新たに開発中です。こちらはラベルと引っ張ると文字が浮き出るという特徴があり、さらに用途が広がっていくと思います。
高桑
お客様との会話の中にヒントがあることも多く、ご要望をきっかけに、新たな用途を展開していければいいなと思います。ただそのときはまた改良が必要になるでしょうし、さまざまな試験を依頼するでしょう。また大畠さんや網野さんの力を借りることになると思います。
網野
過酷な環境下での試験でも、洗車でも、何でも来いです(笑)。「非転着タイプ」はセキュリティーラベルとして活用されたり、貼られていたものが再利用できる、という点でリサイクルに役立ったりと、社会貢献度が高い製品。どんどん試験をして、どんどん広めていきたいと思っています。
印刷用粘着紙と印刷用粘着フィルム、可変情報印字用ラベル素材のラインアップをシリーズごとにご紹介しています。各製品の基材色や、粘着剤のタイプなどをご確認いただけます。